日本語の「対格・属格交替」と Agree/Phase 理論による Wh 一致分析
浦 啓之(関西学院大学)
浅野真也(関西学院大学・院)
浅野真也(関西学院大学・院)
本発表は,従来理論的にほとんど考察されてこなかった「対格(を)・属格(の)交替」(→(1))が,日本語でも条件さえ整えば可能であることを論証し,更にその成立条件の統語的メカニズムを探ることを目指す。より具体的には,次の3つを目標とする:(A) まず,当該の例文においては,対格が属格に交替しているとする以外に分析できないこと,(B) 次に,様々な統語分析テストにより「対格・属格交替構文」の生起条件を明らかにし観察的一般化として示すこと,(C) 最後に,これらテストによって明かされた「対格・属格交替」の統語的諸特徴を,現行の統語理論で過不足なく導き出すこと,である。
(1) a. [[ pro 燃えるゴミ–を/–の 捨てる ] 場所 ]–に 燃えないゴミが捨ててあった。
b. 彼にも [[ pro 悪事から 足–を/–の 洗う ] 日 ]–が ついにやって来た。
c. 彼らは 露見を恐れて [[ pro 大統領–を/–の 暗殺する ] 計画 ]-を 破棄した。
d. [[ pro 力–を/–の 入れる ] 科目 ]–と 入れない科目を 区別しなさい。