トルコ語の属格名詞の独立性と疑問接語の生起位置

吉村 大樹 (大阪薫英女子短期大学・非)

本発表ではトルコ語の疑問接語の位置と属格名詞の統語的振る舞いが互いに深く関係することを論じる。属格名詞は主要部名詞に対する統語的独立性が高いのに対して,非属格修飾名詞や修飾的形容詞は主要部名詞に常に隣接しなければならない。そこで属格名詞の生起位置を直接的に決定するのは主要部名詞ではなく主要部名詞を統語的に支配する述語であると仮定すると,疑問接語が属格名詞に隣接するときは不連続構成素を形成しない。しかし非属格修飾名詞や修飾形容詞と主要部名詞との間に疑問接語が介入する場合は構造が不連続的であり,当該の構造が不適格となる。以上の分析には、移動や変形が必要なく,疑問接語の音韻・形態論的な特徴を説明できる利点があることを主張し,疑問のスコープの表示についてもこの分析法を用いて充分説明が可能であることを提示する。