本発表は,満蒙日の三言語の限定表現に関し,量的・類的二種の認知的特徴に基づく取り立て詞としての談話機能の共通性を論じた。すなわち,少数概念を提示して限定を表す量的限定teile, гагцхүү,「だけ・のみ」は,1を最低数とする数量概念上での少数領域を指定して,話者が期待される数量よりも絶対スケール上で少ないことを指摘することで言及対象を取り立てる機能があると考える。これに対して,類的限定canggi, зөвхөн,「ばかり」は,ある性質を共有するものの集合を想定しそれに近いものをより遠いものから区別することで限定を行い,その基準となる特徴からの相対的な距離によって測られることから,相対スケール性に基づく取り立てであると考える。(例)emke teile (一つだけ), nure canggi (酒ばかり); зөвхөн итгэлээр, гагцхүү Христээр (専ら信仰により唯一キリストによってのみ); 「男は一人だけ(のみ)で他は女ばかりの集団」