シベ語の「副動詞+bi-」構文(bi-は「ある・いる」を表す)の機能は,先行研究において証拠性(evidentiality)の観点から動詞biの形によって直接経験または間接経験を表すと分析されてきた。本発表では,動詞biの三つの形(bixei, bixee, bixeŋe)についてその機能の分析を行い,まず「副動詞+bi-」構文の一部には従来間接経験として捉えられてきた用法(発見や物語的用法)があるものの,その機能の全体が直接/間接経験で捉えきれるわけではないことを示した。その上で,「副動詞+bixei」は話し手にとって未知の事態(聞き手にとっては未知/既知の両方の場合がありうる)を,「副動詞+bixee」は話し手と聞き手の双方にとって既知の事態を,「副動詞+bixeŋe」は話し手にとっては既知だが聞き手にとっては未知の事態を,それぞれ表すことを明らかにした。