バントゥ諸語分岐の歴史:一つの仮説

湯川 恭敏(帝京平成大学)

バントゥ諸語にとって基礎的な 200語彙項目をそれぞれの言語・方言についてリストアップし,比較して親近関係を推定し,以下のような仮説を得た。

  1. 祖地は,カメルーンとナイジェリアの国境付近らしい。
  2. 祖地を離れた一部が熱帯雨林の北を通ってヴィクトリア湖西岸に定住し,そこから東・南方に広がったと考えられているが,検討結果はこれと矛盾しない。
  3. ケニア・タンザニアの中部・東部言語の話者は,湖の南を通ったらしい。
  4. ザンビア諸語やルバ語の話者は,タンガニーカ湖の東を南下したらしい。
  5. ナミビア諸語の話者は,ザンビアを通過して移動してきたらしい。
  6. 南部アフリカ諸語の話者は,海岸部でなく,内陸部を南下したらしい。
  7. コンゴ河中流諸語の話し手は,祖地から熱帯雨林を河沿いに移動し,コンゴ河下流諸語やガボンの諸語は,海岸を南下したらしい。