日本語の指示詞を起源とする感動詞(あの,その)を対象として,分析を行った。言語データは文字化された会話文(漫画・小説)を用いた。用例を収集した結果,あ系は自分の話題,そ系は相手の話題の時に用いられることが明らかになった。これは従来から指摘されている,あ系・そ系感動詞の区別が指示詞と並行するという主張を支持する結果となった。また,そもそも指示詞は直示用法の段階から,注意喚起と検索という二つの機能を持っており,それらの機能が感動詞(呼びかけや言葉探しの用法)に拡張するという仮説を提示した。これまで日本語指示詞のあ系は記憶の探索から感動詞に拡張したと考えると,記憶の探索に使えない韓国語のあ系指示詞が韓国語でも感動詞になっていることの説明ができないと指摘されていた(田窪2005)。この仮説では韓国語の例も説明が付くことになる。