本発表ではブルシャスキー語の「反響語/echo word」と呼ばれる形態論的操作に関して,その意味的特徴・形態音韻論的特徴を記述し,後者に関してはその理由も考察した。
反響語は意味的に3種類の機能を担っている:多数化・曖昧化・強化。また,反響語形成の手段には次の3つがある:子音変化・加音・母音変化。
反響に用いられる音としては,子音は唇音(p・b・m)が優位である。ただし反響音決定のトリガーとなる音がmの場合,反響に非唇音が用いられる。母音はa > o・u > i・eの順で用いられ易い。
反響語という即時的言語操作で [+labial] の音が優先される傾向の理由は,それらの音がα) 発音し易いため,そしてそれゆえにβ) 幼児の獲得が早い音であるためと考えられる。βに由来して,子供染みた言動を連想させ,稚拙さや滑稽さに繫がる音であるという意識があると推測される。