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台湾ブヌン語の,「望ましくない状態」を表す形容詞の派生に用いられる接頭辞 matu-形態分析と意味記述-

野島 本泰

本発表では,ブヌン語(台湾,オーストロネシア語族)の接頭辞 matu- の形態分析を行い,意味を記述する。結論は以下の通り:
(ア)接頭辞 matu- は単一の形態素(接頭辞)である。
(イ)接頭辞 matu- を含む語の意味は,次の二つに大別できる:

  1. けがや病気,心身の脆弱をはじめとする,望ましくない状態を表す語。
  2. 一定の時間持続する体の姿勢,顔の表情などの状態を表す語。
(ウ)接頭辞 matu- を含む語は,大部分は動詞というよりはむしろ形容詞だといえる。
(エ)接頭辞 matu- はどんな語根にも生産的につくというわけではない。これまで結びつきが確認されている語根は40数個しかない。しかし,その一方で,比喩の原理で作り出されたと思しき「新語」に接頭辞matu-が含まれているなど,若干の生産性も観察される。

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