Harada (1971)が日本語における主格・属格交替に関して明示的に取り上げている,副詞が意味上の主語と述語の間に介在する例は,その後,直接分析の対象となっていない。そこで,我々は,現代日本語における(副詞を含む)主格・属格交替のデータを,18歳から29歳までの大学生から得,それを統計分析することで,この世代の現代日本語における主格・属格交替の現状を明確にし,その結果が,(日本語)統語論にどのような含意を持つか考察する。分散分析(ANOVA)の結果,(1)副詞自体は,文頭にあれば,主格・属格交替を妨げないということ,(2)意味上の主語と述語の間に副詞が一つ介在しているだけでも,主格・属格交替が妨げられるということが確認された。我々は,この現象は,主格主語ではなく,属格主語が,構造上のかなり低い位置にovert syntaxにおいて,また,他の証拠から,LFにおいても,存在していなければならないことを示していると主張する。