本発表では,主に英語の繰上げ構文における否定辞と数量詞の作用域の解釈に関する曖昧性と,非対格構文/受動文におけるwh移動と束縛現象を考察し,Chomsky (2005)の強フェイズ主要部のみが移動を引き起こすという主張に反して,なぜ弱フェイズvPの指定部に移動が起こるかを明らかにする。本発表の主張は,弱フェイズ主要部vがT同様,強フェイズ主要部Cから素性を引き継ぐためにA移動はvP指定部を経由するという点である。
更に,定形のCP補部との対比からvPと同じく弱フェイズであると考えられるコントロールCP補部について考察し,義務的コントロール構文は強フェイズから引継がれた素性が引き起こすA移動によって生成されることを示す。また,アイスランド語のコントロールCP補部内の要素が任意の一致を示すことから,コントロールCP補部はvPと異なり強フェイズ主要部から素性を引き継がないと主張する。