現代日本語における多重否定極性項目構文について

朴 江訓

従来,日本語の否定極性項目(NPI)「しか」「不定語モ」「1-助数詞モ」「決して」は単一否定文内における他のNPIとの共起(多重NPI)が許される場合と許されない場合があるとされてきた。しかし,管見の限り,多重NPIの生起条件に関する研究はなされていない。本発表は多重NPIの生起条件と,多重NPIが可能な環境における上記NPIの性質を明らかにすることを目的とする。本発表の主張は以下の2点である。

  1. これらのNPIは単一否定辞の下で多重共起する際,必ず付加部位置に現れなければならない。
  2. これらの表現はNPIとして,その多重共起は多重NPIとして捉えられてきたが,この中でNPIの性質を持つのは項位置の「しか」のみであり,付加部位置の「しか」「不定語モ」「1-助数詞モ」「決して」は,否定一致項目(Negative Concord Item: NCI)であり,これらの多重共起は多重NCIとして捉えられるべきである。