本発表では,日本語の「食べる」とそれに対応する韓国語の「meogda」を後項とする動詞複合を取り上げ,1)前者は,その殆どが「句」であること,2)後者は,「語の形態的緊密性」と「意味変化」という2つの観点から,第Ⅰ類型(=「句」)・第Ⅱ類型(=「句」の性質と「複合動詞」の性質を同時に保持)・第Ⅲ類型(=「複合動詞」)に分類できること,3)日本語では,韓国語の第Ⅱ類型が形態構造上,実現不可能であり,その根底には日本語の{-て}という要素が深く関わっていることを指摘する。そして,上記の考察結果を踏まえて,「日韓語の動詞複合形成モデル」を提示し,日韓語の動詞複合は,その「形成システム」において根本的な相違点が見られることを主張する。この「日韓語の動詞複合形成モデル」は,日韓語の動詞複合の形成過程を操作手順の段階を想定して説明するものであり,これに基づいて分析することで,両言語間にある7つの相違点が明確に対照可能であることをあわせて指摘する。