非意図的な出来事における他動詞使用と「責任」意識-日・韓語の対照を通じて-
吉成 祐子
パルデシ プラシャント
鄭 聖汝
パルデシ プラシャント
鄭 聖汝
本研究は,「うっかり皿を割った」のように,動作主の意図が欠けている行為についても他動詞を使用する動機として「責任」という概念に注目し,事態把握における責任の認識と語用論レベルでの言語化との関わりを実験的手法によって検証するものである。非意図的他動詞文が発達している日本語と韓国語を取り上げ,両言語話者を対象に,非意図的な原因を操作した状況について自由記述による事態説明と責任意識の評定を求める実験を行った。事態説明に他動詞が用いられる頻度と責任評定とを統計的に分析したところ,両言語話者ともに事態に対して同程度の責任意識を持つが,言語表現においては,日本語にのみ,事態に対する責任意識が高いほど他動詞の使用も多いという特有の傾向が示された。このような結果より,「責任」という概念の言語表現への反映は連続的なものであり,日本語は反映の度合いが韓国語よりも高いほうに位置づけられる言語であると提案できる。