日本語/English
日本言語学会について
入会・各種手続き等
学会誌『言語研究』
研究大会について
学会の諸活動
その他関連情報

日韓語の文末形式の対照研究の新展開
―構文論的・語用論的機能の対比を中心に―

企画:堀江 薫
司会:塚本 秀樹
指定討論者:生越 直樹

日本語と韓国語の対照研究は1990年代から現在にかけて大きく進展し,文法・言語行動といった様々な領域において研究が進展した(例:国立国語研究所1997,任・井出2004,油谷2005,『社会言語科学』特集号,『韓国語教育論講座』,尾崎2008)。この中で,SOV言語としての日韓語の構文的・語用論的特徴が最も顕著に現れる「文末形式」(終助詞・終結語尾・構文等)に関しては対照研究が生産的に行われ,日本語の「名詞構造志向」と韓国語の「動詞構造志向」(金2003)など興味深い相違点が指摘されつつある。しかし,両言語の述語構造の体系性の違いに関わるだけに,まだ両言語の文末形式の構文論的・語用論的機能の類似点と相違点の範囲が精密に確定されているとは言い難い。本ワークショップでは,日韓語の文末形式に関して,語用論,談話分析,コーパス言語学等隣接分野の知見を取り入れた新たな分析を提案し,両言語の述語構造体系の相違点の解明に資することを目的とする。

「のだ」と「것이다(KES-ITA)」の談話機能の対比

金 廷珉

本発表の目的は(I)ジャンル別に見られる「KES-ITA」の特徴を明確にすること,(II) 会話文に現れる日本語の「のだ」と韓国語の「KES-ITA」の生起頻度及び,(非) 対応関係を調べ,両形式の談話機能の類似点と相違点を考察することである。
 (I)について,新聞の社説・テレビニュースでは「KES」系の,テレビ談話・ラジオ番組では「KE」系の形式の出現頻度が高いことが分かった。(II) に関しては韓国語のドラマ・映画とその日本語訳を用いて分析した結果,「KES-ITA」は先行文(脈)に対する「理由」を後続文で述べる際に用いられる点で「のだ」と共通の機能を有するが,(i) 話し手のみが知っている情報を聞き手に提示する,(ii) 聞き手に受け入れてほしい命題内容を繰り返して述べる,(iii) 聞き手に即応の反応を要求する場合において,両者は対応しない傾向にあることが分かった。

文末の文法形式に関する日韓対照考察
―知識表明と現象描写の概念を中心として―

文 彰鶴

本発表では,日本語と韓国語の文末の文法形式を対照するに当たって,日本語の終助詞と韓国語の終結語尾との対応に注目するのではなく,日本語の平叙文の二つの述べ方と,韓国語の終結語尾の形式分化のし方の対応に注目して考察した。その結果は以下のようである。
 (I) 日本語の終助詞と韓国語の終結語尾の間には直接的な一対一の対応関係が見られず,日本語の平叙文に見られる二つの述べ方(“発話時に認識した眼前の事態をそのまま表現する”眼前描写文と“話者が既に知識として定着させている事柄を述べる”知識表明文)と韓国語の終結語尾が担う意味の間において,より密接な関わりが見出される。
 (II) 眼前描写文と知識表明文との違いが,日本語では特別な形式の違いとして現れることがないが,韓国語ではその違いが終結語尾の形式分化(-ne・-kwun:眼前描写形式,-ci:知識表明形式,-e:中立的形式)によって,表わされている。

韓国語の半言と日本語の終助詞の類似点・相違点の提示
―半言の用法分類からの試み―

平 香織

韓国語の半言‘-ketun’,‘-ney’,‘-ci’,‘-e’と日本語の終助詞「ね」「よ」は,(i)文末に生起し,(ii)主に会話で使用され,(iii)話し手の心的態度を表すという特徴を持つが,この特徴が示す内容には両言語で違いが見られる。例えば,終助詞「ね」「よ」は「会話での使用=聞き手に向かった発話」と言うことができるが,半言‘-ketun’,‘-ney’,‘-ci’,‘-e’の中には,聞き手に向かった発話だけでなく独り言でも使用できる形態もあり,必ずしも「会話での使用=聞き手に向かった発話」と言うことができない。
 本発表では,半言と終助詞を対照した際に見られる(i),(ii),(iii)の特徴の違いを指摘した上で,発話に至るまでの過程と半言4 形態の用法を組み合わせた分類を試み,その分類に沿って「ね」「よ」の機能・用法がどの点で重なり,どの点で異なるのかを論じる。

プリンタ用画面

このページの先頭へ