本発表では,韓国江原道の東側に位置し,慶尚北道の蔚珍と接している三陟方言の名詞アクセント体系について考察する。
従来の研究において,三陟方言は音の高さによって弁別性をもつピッチアクセントという点では一致しているが,アクセント体系の観点から見ると,「多型アクセント」という見解と,「N型アクセント」という異なった見解が見られる。
これに対し本研究の調査では,1音節の名詞では3個の対立,2音節以上ではn音節の名詞に対してn+1個の対立をなす「多型アクセント」であることが分かった。また,3音節以上の語末音節のみが高くなる音調型(尾高型)は,音調のゆれが見られる不安定な音調型であり,他の音調型に合流しつつあることを指摘する。