中国に住む朝鮮族によって話されている朝鮮語(中国朝鮮語)はアクセントによる対立を持ち,先行研究では,2音節名詞に,○]○,○○],○○の3つの対立があげられている( ] は下り核アクセント)。○○]と,○○の語は,単独ではいずれもL(ow)H(igh)で発音され,○○]は助詞が低く,○○は助詞の1音節目が高く現れるとされる。
吉林省龍井,図們,汪清,黒龍江省寧安,牡丹江,鶏東それぞれの地域出身の話者を調査したところ,単独でLHで現れる語で,○○]と○○の区別が曖昧になっていることが観察された。検証の結果,比較の助詞(2音節)をつけた場合から○○]と○○の区別が失われやすく,次に主格助詞(1音節)をつけた場合の区別が失われやすいことが分かった。区別が失われた場合には○○]に統合され,子音終わりの語が無核で残りやすいことも分かった。