飲食動詞構文の日中対照研究

許 永新

飲食動詞(「飲む」や「食べる」など)は類型論的にほかの動詞と異なる振る舞いを見せる場合がある。本発表では,日本語と中国語における飲食動詞の構文的特徴を考察した上で,受影動作主(Affected Agent)という概念を導入し,飲食動詞は動作主と受影者の二面性を持つことを提案した。そして,飲食動詞の構文的特徴は,どの側面がプロファイルされるかで説明することができる。主に次の三点を主張する。

  1. 飲食動詞の不定目的語がしばしば現れないのは,動作主の受影者の側面がプロファイルされているためである。
  2. 日本語における飲食動詞の受身文の可否は,動作主と受影者のどちらの側面がプロファイルされるかで決まる。
  3. 中国語の飲食動詞において一見直接目的語制約(DOR)に違反するように見える現象は,動作主の受影者の側面がプロファイルされているためであって,違反にはならない。