本発表では,話し手と聞き手の両者が共に移動の主体となっている場合を取り上げて,日本語の「行く」「来る」と韓国語の「가다kata」「오다ota」の選択に関わる要因が異なっていることについて論じる。「行く」「来る」は,移動の到着点と話し手との関係という心理的側面が強く関わっている。これに対して「가다kata」「오다ota」には,発話時の場所から離れていくか近づいてくるかという物理的側面が強く関わっている。
「行く」「来る」と「가다kata」「오다ota」の選択にみられる心理的・物理的側面は,「~ていく」「~てくる」と「-어 가다-e kata」「-어 오다-e ota」の選択にも受け継がれていることを示す。