オノマトペの「特異性」再考―音韻と意味の接点―
秋田 喜美
竹安 大
竹安 大
一般に,オノマトペは「特異」であるとされている。この通念に対して本論は,オノマトペの音素分布を成人発話(一般語彙)及び幼児の音産出のデータと統計的に比較することにより,オノマトペが必ずしも「特異」ではないことを主張するものである。
まず,オノマトペと成人発話の音素分布について,意味論的観点を考慮せずに分析を行ったところ,オノマトペの音素分布は「特異」であった。ところが,「類像性階層」という意味論的観点に基づきオノマトペを分類し再度分析してみると,オノマトペと一般語彙の音素分布に連続性が見られ,オノマトペは必ずしも一般語彙から切り離して議論されるべきではないことが示された。更に,幼児の音産出との関係を見ると,一般語彙獲得に見られる視覚優位性を示唆する結果がオノマトペについても見られた。以上の発見は,オノマトペ研究における音韻と意味のインタフェイスが追究されていく必要性を伝えている。