チャック語は,バングラデシュ・チッタゴン丘陵を中心に約2000人の話者をもつチベット・ビルマ語派・ルイ語群の言語である。本発表では,チャック語において形容詞を動詞から独立した語類としてみとめるべきかどうかについて検討した。チャック語の形容詞は,(1)名詞に対する付加語となる,(2)最上級接尾辞が付加する,(3)重複によって副詞的名詞となりうる,といった点で動詞と区別しうる。ただし,これらの特徴のうち(1)と(2) については,一部の動詞においても共有される。(3)については,不規則な重複語形成をする形容詞がおおいことから,語類をわける基準とみなしがたい。他方,チャック語の形容詞は,(A)否定助動詞が直接付加する,(B)関係節による名詞修飾表現ができる,といった点において動詞とおなじようにふるまう。だから,形容詞は動詞の下位分類として位置づけることができる。