幼児による三項動詞構文の理解と格助詞について

礒野 将典
鈴木 孝明

三項動詞構文の獲得を扱った先行研究では,動詞句内の語順に焦点が当てられてきた。本研究では,語順という要素をとりのぞいて,動詞句内に与格の「に」または対格の「を」のいずれかが付与する名詞句を使用した文を用いて,幼児がこれらの格助詞を文理解の手がかりとして使用できるのかどうか絵画選択法による調査を行った。その結果,「を」による手がかりに比べて「に」による手がかりは難しいということがわかった。これは,これら2つの格助詞の獲得時期に関する差を反映しており,三項動詞構文の動詞句内の語順選好においても,格助詞の獲得が重要な要因となっている可能性があることを示唆している。