日本語は「pro 肉だけを食べない」のように「だけ」が目的語に付いた場合(「肉だけではなく他のものも食べる」という)「ない」>「だけ」の読みが可能であるが,「和夫だけがpro食べない」のように「だけ」が主語に付いた場合には不可能となる。この違いは,否定辞が目的語はc統御するが主語はc統御しないことに因るもので,統語的制約が働いていると考えられる。子供による解釈もこの統語的制約に従ったものであれば,子供は「ない」>「だけ」の読みを目的語+「だけ」の文で容認し,主語+「だけ」の文で却下するはずである。本研究ではこの予測の検証のために,19名の4~6才(平均6才2ヶ月)の日本語児と20名の大人の日本語母語話者を対象に真理値判断法に基づく実験を試みた。分散分析による結果に基づき,「だけ」を含む否定文の解釈に際して子供も大人と同様統語的情報を用いていると考えられることを結論として報告する。