日本語の文理解におけるアスペクト情報の処理

龍 盛艶
小野 創
酒井 弘

文の意味解釈におけるアスペクトの決定には,述語のみならず目的語や時間副詞など様々な要素が関わることが知られている.アスペクト情報処理メカニズムを明らかにしようとする研究が進められる中で,動詞の語彙的アスペクトと時間副詞など述語修飾要素の間のアスペクト情報の不一致が文処理の負荷を増大させるか否かという問題が検討されてきたが,まだ明確な答えが得られていない(Pickering et al., 2006, Todorova et al., 2000).さらに,これらの研究は主に英語を対象とし,英語と異なる構造を持つ日本語のアスペクト情報処理に関する研究はまだほとんど進んでいない.そこで本研究では,日本語の時間副詞,数量詞,述語の組み合わせにおいて,アスペクト情報の不一致がもたらす効果を自己ペース読文課題を用いて検討し,不一致が処理負荷を増大させること,時間副詞,数量詞,動詞の語彙的/文法的アスペクトなど様々なアスペクト情報が逐次的に処理されていることを明らかにした.