現代日本語の「も」には少なくとも,全称量化子としての「も」,否定極性要素の一部としての「も」,添加表現の「も」などがある。本稿ではKobuchi-Philip(2008)の全称量化子としての「も」の分析を一部修正したものが,添加表現,さらに否定極性の「も」にも適用できる事を主張する。本案の特徴は,(1)「も」句はタイプが<<e,t>,<e,t>>であり,(2)表面上無主語の文では空主語が存在し,(3)この非明示的主語は文脈中から補充され,「も」句内の名詞がこれの部分集合となっており,(4)「も」の意味は複数性条件を含む,というものである。これらは全称量化,添加表現,そして否定極性のどの「も」にも適用するため,これらの条件を記述した新しい「も」の論理式により従来異なった扱いを受けて来た「も」に統一的な意味分析が可能である事を示す。