日本語の助動詞ハズダ,ワケダはそれぞれ認識のモダリティ,説明のモダリティに分類されることが多い。認識のモダリティは,未知の命題に対する話者の心的態度を表すことを基本として,また説明のモダリティは既知の命題に対する話者の心的態度を表すことを基本としていると一旦捉えることができるが,これら二形式は実際には上記のどちらの場合にも使用可能である。また,二形式共に過去形を取ることができ,~ガナイという否定の形もとることができる等振る舞いに多くの共通性を有す反面,条件文においてスコープの取り方に異なりがあることも知られている。
本研究は,これらの振る舞いに対して説明を与えることを目標とする。ハズダ文,ワケダ文は共に先行文脈の性質(status)について述べた文であること,また,最も重要な違いは,ハズダ文では先行文脈に特別な限定はないが,ワケダ文では先行文脈が知識に限定されていること等を指摘する。