日本語の複合名詞に関する考察

臼杵 岳

伊藤&杉岡(2002)は,日本語の内項複合名詞(e.g. ゴミひろい)と付加部複合名詞(e.g. ペン書き)が,異なる段階で派生されると議論した。本発表では,伊藤&杉岡(2002)がLCSでの派生を仮定する付加部複合名詞に関して統語的派生を提案し,内項複合名詞と付加部複合名詞は共に統語部門で派生されると仮定する。具体的には,統語的意味役割仮説(Hale and Keyser 1993, Tada 2003)に基づき,"Intermediary Instrument"は統語的項であると考え,その項位置から形態的併合により英語の名詞転換動詞が派生されると論じる(Matushansky 2006, Ono 1992)。日本語においても英語と同様に"Intermediary Instrument"が存在することを示し,名詞転換動詞の派生と同様の過程により付加部複合名詞が派生されると提案する。