「言語構造のワールドアトラス(WALS)」を使用した言語の多様性の視覚化
―格を持たない言語の文法特徴―
野瀬 昌彦
ハンス-ヨルグ・ビビコ
ハンス-ヨルグ・ビビコ
「言語構造のワールドアトラス(The World Atlas of Language Structures)」(以下,WALS)を使用し,言語の多様性を視覚化する試みと事例研究を紹介する。WALSのウェブ版(WALS Online)を取り上げ,従来のWALSから改善された点や新機能について示す。加えて,事例研究として,格を持たない言語が格の代わりにどのような文法形式を使用しているかをサンプル言語を使用して類型化する。
WALS Onlineを使用した事例研究として,格を持たない言語がどのように文法関係や場所関係を示しているかを取り上げた。12言語のサンプル言語を抽出し調査した結果,格標示によらない場合,動詞に何らかの標示がなされる場合(いわゆる一致)と語順で表される場合の可能性がある。また,格を持たない言語は,主要な文法関係については語順か動詞の一致を取り,場所や共格の関係については前置詞や後置詞で表す傾向があることが判明した。