英語,ペルシャ語,ヘブライ語,Sidaama(Sidamo)語(エチオピア中南部のCushiticの言語)における名詞句内での修飾を比較し,「修飾」という概念が普遍的であるとは言えないということを示す。伝統的に修飾は統語的な概念として扱われ,修飾語に接辞は通常含まれない。英語の名詞句における修飾語も,ペルシャ語のEzafeの接尾辞の標示が起こる修飾語も,ヘブライ語のconstruct stateにおいて名詞の定性の標示の欠如をもたらす修飾語も,統語的に定義される。
しかし,Sidaama語での,名詞句における修飾という概念は,多くの場合,普通名詞に連体修飾語が伴うことだけでなく所有人称接尾辞が付くことも含まれるという点で,統語的であるだけでなく形態的である。この言語では,普通名詞が統語的または形態的に修飾されているかどうかによって,格の接尾辞の異形態の違い等の7つの文法的区別が成される。ところが一方で,通常の統語的な修飾も関係した文法的区別が成されることもあり,この言語内でも一貫性がない。