本論は,[N Nom N]のような,主格を表す「は」「が」が,同一の名詞表現が繰り返される間に介在している表現の意味解釈について考察する。
(1) [みんながみんな]大学へ{行くわけではない/*行く}
(2) [場所が場所]だから,みんな{来ないだろう/*来るだろう}
(3) {あんなに年配だが/*あんなに優秀だが},彼は[学生は学生]だ
(4) {騒がしいね/#可愛らしいね},やっぱり[子供は子供だ]
この表現の分布には制限がある。(1)-(4)の例では,命題および名詞表現の属性について話者に否定的な含意があるときのみ適格な文となる。この特徴を踏まえ,本論では[N Nom N]の表現をNBN (Negative Bias Nominative) と呼ぶことにする。本論では,NBNは主節命題Pを項にとる関数であり話者が命題,状況,対象について否定的な見解をもっていることが前提として真理条件に含まれると提案し,その意味解釈の形式化を提示する。