従来の研究では,中国語の量化表現dou(都)は,もっぱら,その左側に生起する「複数解釈のNP」を量化すると考えられてきたが,本発表では,右側の要素(Event)との依存関係も考慮に入れた上で,douの構文的特徴を次のように分析する。
(1) douはdou構文のHeadであり,且つ量化NPとEventを項に取る演算子(operator)である。
(2) 量化NPとEvent内の量化表現はそれぞれdou及びtdou (douの移動により残されたtrace)の要請によって,移動され,分配される。
(3) 単に「複数解釈のNP」ならば何でも移動と分配操作の対象になれるわけではなく,douとEventとの相関関係によって (i) 単数解釈になる,(ii) 不定語(indeterminate)になる,(iii) 空である,いずれかのものに限られる。