ガ格三連続文の処理に有生性が及ぼす影響について

坂本 勉,安永 大地

ガ格名詞句が三連続する中央埋め込み文(ガ格三連続文)において,名詞句の有生性の違いが文処理にどのように影響するかを,被験者ペースの読み時間計測実験で検証した。

  1. [有生] 講演者が 聴衆が 娘が 入場する 前に 集まる のを 確信した。
  2. [無生] 講演者が 視線が 娘が 入場する 前に 集まる のを 確信した。
 その結果,意味役割がAGENTにもTHEMEにもなりえる有生名詞句(「聴衆が」)の方が,THEMEになることが多い無生名詞句(「視線が」)よりも読み時間が有意に長かった。統語的には同一の条件(ガ格三連続)であっても,意味役割の曖昧性の大小が文処理に影響を及ぼすことが示された。さらに,この曖昧性は,それが解消される述語(「集まる」)まで持続することが分かった。このことから,格助詞や意味役割,述語などの情報がリアルタイムで利用され,即時的な文処理が行われていることが明らかになった。