南琉球八重山波照間方言における格標識と語順

麻生 玲子

本発表の目的は南琉球八重山波照間方言(以下,波照間方言)の格標識と語順の関係を考察することである。波照間方言の格標識は12個設定することができ,他の琉球列島の方言と比べて特徴的な格標識をいくつか挙げることができる。その中で本稿では,現段階で「コア格」と設定している格標識に焦点を当てる。コア格は,波照間方言の先行研究(平山1967,加治工1975)のいずれにおいても報告がなく,発表者が現地調査で同定した格である。形式は「=φ」で,core argument(主語と目的語)を標示する。話者は,形式上区別のつかない主語と目的語をどのように区別しているのだろうか。本発表では,主にテキストを分析することでこの問題を考える。この結果,波照間方言では➀語順が非常に重要な役割を担っており,➁倒置構文の時は,必ず主語に焦点標識が必要である,ということがわかった。