本発表の目的は,これまで発表者が行ってきたノルド諸語(北方ゲルマン諸語)の記述を基に,新たな視点からストレスアクセントの類型論を提案することにある。
ストレスアクセントは,ピッチアクセントや声調に比べて,その本質が未だ十分には解明されていない。例えばノルウェー語は主強勢を伴う音節に二種類の音調が現れるが,ストレスアクセントとピッチアクセントの「併存」や,ストレスやピッチとは別の「中間的」なアクセントであると説かれてきた。
発表者は,このような主張は全てストレスアクセントの理解が不十分であることに起因すると考え,異議を唱えたい。そして,ノルウェー語の様に異質なアクセント体系の併存に見える現象がストレスアクセントの一変種であることを提唱し,さらに,デンマーク語など他のノルド諸語の資料からストレスアクセントの更なる変種を提唱することで,音声実質に即したストレスアクセントの類型論を試みる。