現代ウイグル語の文法化助動詞にみる意図性の反映
―baq-/kör-とal-/bol-―

山崎 雅人

本研究は,現代ウイグル語の文法化助動詞のうち,視覚動詞起源で試行を表すbaq-とkör-並びに可能表現に用いられるal-(「取る」)とbol-(「なる」)をとりあげ,文法化した後にもとの動詞にあった意味素性が残存する「保持化」に基づく考察を行う。  試行結果を理性的論理的に考慮・検討する-p baq-と直観的感覚的に感受・受容する-p kör-に,両動詞の意図性の有無という意味の差異が現れていると考える。○U ün'alghuni qoyup baqti.《彼は録音機を試しにつけてみた》(音質等を考慮して購買を検討した場合):U ün'alghuni qoyup kördi.《同上》(修理した後に機器の作動を確認した場合)  可能表現で意図性と関連する能力による可能にはal-を助動詞として用い,bol-は客観的状況下での許可として「~できる・してよい」となる。○U mashina heydi yeleydu.《彼は車を運転できる》:Bu yerge kirsem bolamdu?《ここに入れますか(入って良いですか)》