ラオ語ビエンチャン方言の声調のコンテクスト間変異
―末尾位置と非末尾位置の比較―

柳村 裕

ラオ語ビエンチャン方言の声調は,末尾位置(後続音節の無い位置)と非末尾位置(後続音節がある位置)の間で異なるピッチパタンを示すことが報告されているが,その音声的詳細はこれまで記述されていない。本研究では,上述2種類のコンテクストにおける発音の基本周波数(F0)を比較し,声調のコンテクスト間変異を観察する。その結果,ラオ語の5つの声調のうち,3声調にコンテクスト間変異が認められることを示す。変異が観察された3声調のF0パタンは,5段階の調値(1が最も低く5が最も高い)を用いると,末尾位置ではそれぞれ 451,34,215 であるのに対し,非末尾位置ではそれぞれ 454,33,311 である。さらに,これらの変異が生じるメカニズムについて考察を行い,声調が実現する母音の継続時間および観察された変異のパタンを考慮すると,これらの変異は音声学的に妥当な説明が可能なものであることを示す。