本発表では,フィンランド語のA不定詞(第1不定詞)変格形がどのような意味機能を持っているかについて,コーパスからの用例を基に考察することを目的とする。先行研究では,A不定詞変格形の主な意味機能は<目的>・<程度>・<陳述>の3つであるとされている。
コーパスより得られたA不定詞変格形のうち,8割ほどが<目的>のA不定詞変格形であり,<程度>や<陳述>の例も確認できた。しかし,これら3つに分類しにくい例が1割近くあり,そのような例を<到達>として分類した。<到達>とは,事象Aから事象Bに達したという意味を持つ。
調査の結果,A不定詞変格形の意味機能は<目的>・<陳述>・<程度>・<到達>の4つと解釈できる。発表者は,「4つの意味機能は並列的に連続したものではなく,<到達>がA不定詞変格形の基本的な意味機能で,他の3つは<到達>から派生した意味機能である」という仮説を立てる。