「verbal noun(VN)+を+する」で表わされる日本語軽動詞構文(JLVC)は,意味的に述部の働きをするVNの項が,VNの投射の外に現れるという特性を持つことが指摘されてきた。本発表では,JLVCの特性が,従来のLF編入や虚辞を用いた分析では説明できないことを指摘し,それが多重主要部分析を用いることで説明できることを示す。具体的には,Fukui 1986,Citko 2008の投射に関する論をもとに,[+V]の素性を持つ語彙範疇同士が併合した場合,機能範疇に選択されるまでいずれもが投射を閉じないと主張し,JLVCは,VNと「する」の多重主要部構造になっていると論じる。そして,JLVCにみられる特性を,このような多重主要部を許す統語派生の帰結として説明しうることを示す。さらに,この分析を用いることで,他の義務的コントロール動詞との平行性が捉えられる可能性を指摘する。