本講演では,現代朝鮮語のうち特に,中国北東部延辺朝鮮族自治州で話されている延辺朝鮮語の漢字語アクセントについて,中期朝鮮語アクセント(約30種の文献調査による)からの歴史的発展と,その例外的変化に観察される類推の影響について分析を行うことを目的とする。分析対象は,延辺朝鮮語母語話者から得られた2音節漢字語(約8,000語)であるが,必要に際し2音節固有語(約800語)についても言及する。主要な論点は以下の通り。
フィリピン諸語といえば「フォーカス・システム」と呼ばれるヴォイス現象が最も有名である(最近は,あまり適当ではない「フォーカス」ではなく,symmetrical voice systemなどと呼ばれることもある)。言語類型論ではフォーカス・システムの特異性が語られることが多い。
しかし,オーストロネシア語族,フィリピン諸語の研究者の間で,フォーカス分析が神聖視されているわけではもちろんない。ヴォイスに関わる現象はさまざまな解釈や分析が可能である。その特異性ゆえに言語類型論へのチャレンジとしての役割は依然としてある一方,今日の言語類型論の中でフィリピン諸語のヴォイスを位置づける試みも多くなされている。
また,フィリピン諸語と一括され,タガログ語の例示でもってフィリピン諸語全体を代表させることがある。タガログ語の現象がフィリピン諸語一般にもあてはまるような誤解を与えていることもある。しかし,フィリピン諸語の文法はかなり多様である。
この講演では,フィリピン諸語としての普遍性に言及しつつ,多様性を紹介する。ヴォイスをめぐる現象以外にもフィリピン諸語を特徴づけるものはある。本発表では,
などを取り上げる。発表者が研究を進めているルソン島中部の大言語であるカパンパンガン語 (Kapampangan) やその他の言語からのデータと分析を紹介する。フィリピン諸語の記述的,理論的な研究が,言語類型論とどのような相互作用を起こせるかを議論したい。