本発表は,「テイルの報告性」という主張を踏まえ,認知言語学の基本概念の一つである「事態把握」の観点から一人称主体における「ト思っている」形式の意味機能を分類し明らかにする。
事態把握には「主観的把握」と「客観的把握」の二つの対比的な概念がある。話し手が事態を直接に体験せず,脱主体化することによって事態をより客観的に把握している「客観的把握」の場合,話し手が他者化した自分の思考認識を伝えるのに,「自分以外に属する行為を報告する」という報告性の意味を表すためのテイル形式「ト思っている」が選ばれる。一人称主体の「ト思っている」は間接的で客観的な事態把握の認知態度を有するため,話し手がこのような認知的営みをすることによって,聞き手や他人と異なる思考認識を持っている場合,現実に一致しない可能性のある認識内容を示す場合,さらに事実に反する偽りの認識を提示する場合までに使用されるようになったと考えられる。