本発表は韓国語の助動詞citaに対する文法的特徴の分析に基づいて,文法的多義性の決定プロセスを明示化するモデルを提案する。助動詞citaは多義語であり,受身・自発・可能・状態変化などのいくつかのヴォイスにまたがる意味・用法を持つ。citaの各用法に見られる必要不可欠な文法的特徴をもとに,3つの概念―他動性,名詞句階層,文法的レベル(語彙・構文・語用論)―を軸とした立体モデルが導き出せる。これにより,用法の解釈が決定されるプロセスが把握でき,また,複数の用法に解釈される例がどのような過程で生じるのかも説明できるようになる。さらに,このモデルから,文法的特徴という具体的かつ検証可能な基準に基づいた意味地図を作成することができる。つまり,この立体モデルは,多義語における意味・用法の相互関係を文法的特徴の組み合わせから捉えることを可能にするものである。