本発表では,複数空所構文において,より線的に近い空所にのみ再帰代名詞の再構築が可能であるという観察(Munn 1994)を取り上げ,線的概念に言及しない構造的な説明を提案する。特に,主語条件が「移動した句からの抜き出し」を禁止するものだという仮定のもと,再構築に関わる操作が文の派生の過程を参照し,派生的に形成された島への再構築を許すことを論じる。これにより,再帰代名詞の再構築が,主語内寄生空所へは可能だが付加詞内寄生空所には不可能であるという対比とともに,連続循環的移動構文においては再構築の解釈が多義的であることを,特別な仮定なしに説明できる。この議論は,主語の島と付加詞の島を区別する「反CEDアプローチ」(Stepanov 2007)と,線的概念をLFやそれ以降のシステムに組み込まずにPF部門に限定するアプローチ(Chomsky 1995)を支持する証拠となる。