日本語軽動詞構文における項構造と２つの対格制約

本研究では，日本語軽動詞構文に観察される「二重対格制約」（(1)）と「能格制約」（(2)）の2つの対格制約を統一的に説明することを目的とする。この目的を達成するにあたり，先ず日本語軽動詞構文における項構造の形成を捉えた上で，(3)の制約を提案し，上述の2つの対格制約が(3)の制約に還元されることを論じる。その結果，(3)に基づく分析は，構造格と意味役割がお互いに独立した概念ではないという結論を導くことになる。

1. 太郎が　警察に　証拠を　提示（??を）　した。
2. 太郎が　駅に　到着（??を）　した。
3. 構造格が音形を持って現われるのは，それが付与される名詞句が意味役割を与えられている時のみである。