現在、言語学の基礎教育は「言語学概論」あるいはそれに類する講義科目で行われるが、そこで取り上げられる伝統的概念は、本当に現在の言語学、あるいは隣接する関連領域にとって適切なものだろうか。このような問題意識に立って、言語学の研究分野や方法論の異なる講師から言語学基礎教育のあり方について問題提起をしてもらい、さらに隣接領域(日本語教育、脳科学)の研究者などから経験に基づいた発言をしてもらう。言語学教育のあり方と社会における言語学のあるべき姿をめぐって、フロアからの意見を交えた活発な議論を行いたい。
問題意識、方法論、結び付こうとする隣接領域を全て異にする様々な「言語学」群に見出される(見出すべき)家族的類似性、併せて、言語学者が伝統的に結び付きたがらなかった隣接領域「言語使用」の有望性を論じたい。
言語学に興味はないが特定の言語を勉強したいと考え言語学概論を受講する人々は少なくない。一方、教える教員は個別言語研究(語学)と言語学の間に明確な境界線を引きたがる。このミスマッチの解消について考えたい。
言語学概論の知識は実際の教育や研究に活用できてはじめて意味のあるものとなる。その点で、学問分野ごとに異なる言語学概論シラバスがあってよい。また、理解のための演習だけではなく、応用のための演習も必要であろう。
隣接分野で言語研究を行う者として「言語学概論」に望むことは、言語研究を行う上での「共通言語」・「既知として考えて良い概念」の教育、及びそれらの概念と「まだ実証されていないもの」との明確な区分である。