本発表は 1) 日本語においてフォーカス句の直前には義務的に韻律句境界が置かれること,2) 二つ以上の句の直前に韻律句境界が置かれる場合,そのうち一つの韻律句境界のみがフォーカスの標識と解釈され,その他の韻律句境界を置かれた句は,強い対照の解釈を持つことを示す。
またこの観察をもとに,倉橋(2006) による,状態文のガ/ヲ交替におけるガ句は全てフォーカスとして標識されているとの主張を,経験的に検証する。
さらに本発表では,Aoyagi and Kato (2008) による,かき混ぜにより前方に移動した句は"focus"として解釈されるという主張に対し,この"focus"が,実際には対照としての解釈を受けていることを,韻律句境界と状態文のガ/ヲ交替を用いたデータに基づいて示す。