モンゴル語の接辞 -GDは受身接辞として記述されることが多い(以下,-GDを伴う動詞を「GD動詞」,GD動詞が現れる文を「GD動詞文」と呼ぶ)。しかし実際には,多くのGD動詞文は対応する能動文をもたず典型的な能動/受動対応を示さない。本発表では,GD動詞文の多くが受身よりはむしろ「行為の対象に生じる何らかの変化の瞬間的な出現」を表すことを主張する。はじめに,GD動詞が表す「変化」がどのような種類のものであるかを例示する。次にGD動詞が「変化の瞬間的な出現」を表すことの例証として,多くのperfectiveのGD動詞文において「時点を表す表現」は現れるが「期間を表す表現」が現れない事実を挙げる。ただし,perfectiveのいくつかのGD動詞文では「期間を表す表現」が現れうる。そうした例も反例ではなく,「GD動詞は変化の瞬間的な出現を表す」という主張に合致するものであることを示す。