モンゴル語の動詞語尾-laaと-jeeについて―コーパスに基づく分析―

ジンガン

本研究では,モンゴル語のいわゆる過去テンスを示す動詞語尾-laa,-jee,-san,-vのうち,-laaと-jeeの意味・機能を再検討する。先行研究では,この二つの形式-laaと-jeeを制御可能性/制御可能性の欠如,連続的認識/知識の空白,直接知識/間接知識のように,二項対立的に解釈する場合が多い。本研究では,電子コーパス(総語数1,005,821語)を用い,人称とこれらの動詞語尾の共起の強さ,そして共起する動詞の種類と頻度などを調査した。さらに,テクストでの使用を母語話者に実験し,文脈とこれらの動詞語尾の選択は無関係(独立的)であることが実験データの範囲内で観察された。それゆえに,本研究では,動詞語尾-laaと-jeeの選択は,語彙・統語論レベルを超え,話し手(=書き手)が出来事の現実性に重点を置いて語るか,出来事の結果に重点を置いて語るかという意図による語用論的選択であることを主張する。