スワヒリ語の語順と接尾辞の出没

桑名 保智

Haspelmath et al. (2005) によると,スワヒリ語では,名詞は指示詞に先行するが,指示詞が定冠詞として機能する場合は指示詞が名詞に先行する。また,接辞は接頭辞の傾向があるとされているが,場所を表す接尾辞 -ni なども存在する。この接尾辞については,次のような制限があると指摘されている。つまり,名詞に -ni が付された場合,その名詞は指示詞などの修飾語句と共起することができず,名詞が修飾語句と共起する場合は,接尾辞 -ni ではなく前置詞が用いられなければならない。 本発表は,以下の内容を形態統語論的・音韻論的に検討する。上述の接尾辞 -ni の出現の制限にも関わらず,実際は -ni が付された名詞が指示詞と共起できることと,その場合名詞は指示詞に先行されやすいことを示し,その理由を考察する。また,スワヒリ語ではなぜ接尾辞が出現し得るのかを考察する。