パプアニューギニア,Madang地方のTauya語 では,属格の代名詞は修飾する名詞に後続するが,属格の名詞句は修飾する名詞に先行する(NP-N-Prn)。これは,Dryer (2005)によれば,属格の代名詞と名詞句が修飾する名詞の同じ側に生じる(Prn/NP-N, N-Prn/NP)多くの言語と異なり,また,属格の代名詞が修飾する名詞に先行するが属格の名詞句は修飾する名詞に後続する(Prn-N-NP)フランス語などと逆になる,例外的語順である。
しかし,本発表では,Tauya語の属格の接尾辞に,代名詞に付く pi と名詞句に付く na の2種類があることに着目し,実際には属格が代名詞と名詞句の両方の場合とも,全体の名詞句は補部(complement)が主要部に先行する語順であり,「名詞句―主要部―代名詞(NP-Head-Prn)という語順の言語は存在しない」という普遍的語順の例外でないことを述べる。