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ンゴンベ語動詞連体修飾形における奇妙な現象

湯川 恭敬

ンゴンベ語 ((1) ingɔmbɛ) というのは,アフリカのザイール共和国内の,ザイール河のリサラ付近から下流およびその北方の若干の地域に分布するバントゥ系の言語である。
この言語の動詞直説法肯定形は,一般に,
主格接辞+時称接辞+(対格接辞+)動詞語幹+語尾
もしくは,
主格接辞+時称接辞+動詞語幹+語尾(+呼応辞)
という構造を有する。対格接辞,呼応辞は動作の対象に呼応した形をとる。
lo-bengán-ákí 「私たちは追った」
lo-b&aactue;-bengán-ákí 「私たちは彼らを追った」= lo-bengán-ákí-bó
bá-bengán-akí 「彼らは追った」
bá-lo-bengán-ákí 「彼らは私たちを追った」= bá-bengán-ákí-só
(語頭の)lo は複数1人称主格接辞,(時称接辞ゼロ),bengán は語幹,(語幹直前の)bá は複数3人称対格接辞,bó は複数3人称呼応辞,(語頭の)bá は複数3人称主格接辞,(語幹直前の)lo は複数1人称対格接辞,só は複数1人称呼応辞である。
動詞連体修飾形において,被修飾名詞がその動作の主体をあらわす場合,
bato (bí) bá-lo-bengán-ákí 「私たちを追った人々」(bí は指示代名詞)
の如く,直説法形を名詞につづければよいが,被修飾名詞が動作の主体以外のものをあらわす場合は,bato (bí) bá-bengán-ákí-só 「私たちが追った人々」
の如く,主格接辞 (bá) が被修飾名詞 (bato) に対応するようになり,代って,動作の主体は呼応辞(または,動詞のあとに置かれた名詞)によってあらわされるようになる。このような奇妙な現象は,隣接するモンゴ語,ントンバ語,ボバンギ語,等にも認められる。

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