モンゴル語の擬態語の語構成について

一ノ瀬 恵

本稿ではモンゴル語の擬態語の語彙面および語構成における特色と,母音交替をめぐる一般語彙との関連性について論じる。
モンゴル語にはものの形状を表す擬態語が非常に数多くみられ,この点,触覚的な擬態語が特に多いといわれている日本語などとはまた違った独自性をみることができるが,このことは家畜の識別能力が高度に要求されるモンゴルの牧畜文化ともなんらかの関係があると思われる。語構成については語根がそれぞれ象徴価を有する3要素,即ちsubmorpheme(亜形態素)からなり,これらが様々に組み合わされることにより豊富な擬態語が作られる。これら3要素の内,語頭子音は接頭的亜形態素であり,接頭辞のないモンゴル語にこのような接頭的要素があること自体,擬態語の語構成の自由さを示しているものと考えられる。また,擬態語同様,一般語彙にも母音交替がみられるが,交替の意味基準が多様で一定していないことが一般語彙における母音交替に音象徴の跡をみることができるのではないかと考えられる。